永遠に葛藤できるカフカの魅力!『カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること』(頭木弘樹)
若生悠矢@spectiveprophetです。
『カフカはなぜ自殺しなかったのか? 弱いからこそわかること』を読みました。
この本のタイトルにある自殺というキーワードは重たそうに思えますが、カフカは弱くても生き抜いた人でしたので、悩みがちな人の生きるヒントになる部分も多いです。
僕もそんなカフカから学ぶことが多く、またそれよりもカフカの日記や手紙がめちゃくちゃ面白いので、関連書籍が出るといつも読んでしまいます。
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カフカの人物像
僕の所感を大いに含みますが、最初にカフカの人物像を紹介します。
ものすごく簡単に紹介すると、カフカは小説家になりたいサラリーマンで病気で亡くなった人物です。
カフカがすごいのは、現実に向き合い続けたことです。人生をかけて向き合い通しました。
カフカにとっての現実とは、「善」と「悪」、「良い」と「悪い」など両面を含めたカフカが考え得る全てのことです。
それらが判断されたものである常識や周りの意見はカフカにとって関係ありません。カフカは自分が感じる現実から目を背けませんでした。
ほとんどの人は自分の本心や都合の悪い現実を直視することができないので、常識や理想を拠り所にします。常識に従うことや、理想に向かって成長すること、またそのギャップに悩むことが人生だとします。
それに対して、カフカはどこまでいってもカフカ自身を見失わないところがすごいのです。
カフカが自殺しなかった理由はただ1つ
カフカは絶望に生きたことで有名です。自殺をほのめかす発言も多々しています。でも自殺をしませんでした。
その理由は簡単で、自殺すると決断しなかったからです。生き抜くとも決断していません。
カフカは永遠に葛藤できる人だったのです。
自分の書いた小説の出版も、パンを食べるための仕事も、愛する人との結婚も、自殺も、したいけど、したくない、したくないけど、したい、と日記や手紙に書き続けていました。
結局サラリーマンはなんとなくやっていましたが、どれもまともにやらず過ごし、病気になってからは、もう悩まなくて済むといって喜んでいたようです。
出版で成功したように見えるのは、カフカの数少ない友人や結婚した相手(すぐに別れますが)が無理矢理カフカの作品をどうにかしようとしたからで、成功したいけど成功したくないカフカ自身は抵抗し続けていました。
カフカは本当に悩んでいたのか?
有名な話しとして、カフカはこんなことを言っています。
将来に向かって歩くことは、僕にはできません。将来に向かって駆け込むことは、将来に向かって転げ込むことは、将来に向かってつまずくことは、これはできます。一番うまくできるのは、倒れたままでいることです。
カフカの日記や手紙を読むと、ちょっとふざけてるんじゃないかとさえ思えてきます。
カフカは言っていることとやっていることが違っていても、それすら悩みの1つでしかないというスタンスでした。
俺は全部わかってるんだよ!だからこんなんなんだよ!という逆ギレスタイルと取ることもできますが、カフカは淡々と悩み続けています。
また言ってしまえば、決断しようとしていないことは悩みじゃないし、悩みごとを書き散らすという文体だったとみることもできます。なんなら全てがカフカの作品だったと言ってしまうことさえできます。
それほどまでにカフカによる苦悩の表現は魅力的なのです。
(つづく)